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群馬出身の望郷男と、群馬県のこと知らない他国者が、勝手に書き込んでいるブログです
2013年 01月 08日

とりおいの行事

 (30) 鳥追い(とりおい)


もうすぐ小正月。
(この記事は古い話なので、参考になる画像がありません。また、文章は私の知ってる限りの群馬弁で書きました。今は、このような言葉をを使っている人を探すのは大変なくらい希少な言葉です。)

おれんちのほうの田舎に、小正月の子供の行事として「とりおい」つうんがあったっけなぁ。

こりゃぁ何のための行事かっつうと。
秋んなって稲が実ると雀が来てそれを食い荒らしちまうんだ。
まだ田植えもしねぇうちっから、この村い雀が村ぃへえっきねぇようにするおまじねぇっつうか、お祈りみちょうなもんなんだいのぉ。

どんなふうにするかっつうとな、

 <有資格者

小学校3年生から、中学二年までの、この集落の男の子が集まってやるんだ。
これが、どうしてこの学年に区切りがあるかっつうと、戦争中まぢゃぁ尋常小学校が6年その上に高等科つうんが2年あったんだ。
そんで、その子供らがやったんだけぇが、冬の夜の行事だし、1年と2年はさぶくって泣いたるするともちゃあずけだから、仲間にえれなかったんみちょうだ、そんで、上は高等2年で学校卒業しっちゃうから、その上はもうへえれねぇ。それが戦後6・3・3・4制んなって中学2年生までっつう区切りんなったんだんべぇとおもうんだいのぉ。

 <準備

正月の13日んなると、学校がおえるとみんな向山の近くの俺んちの田圃に集まってのぉ、だけどなんで俺んちの田圃かっつうと、ちょうどいいとこに俺んちの田圃があったし、そこのたんぼは山の近くで日当たりも悪りいし、どうせ、冬は何にも作らねぇで空いていたから貸してやったのさ。ボランテアってやつか。
でも一番先輩格のやつがうちぃ「田圃を貸してもらいます」っつって挨拶に来たぜ。
うちはもう承知しているから「あぁいいよ、火にきぃつけてな」っつって快諾してたんさぁ。
そこで準備を始めたっつうわけだ。

そんで、そのたんぼでなにしたかっつうと。
この年に初めてへぇってきた三年生は「しんこう」っつって一番下っ端だ
そのしんこうとその上の4年は山えへえって、杉の落ち葉ぁ拾い集めてきてな、おれんちのたんぼのまんなかえ山にするんだ。
その上のやつらは、集落のうちぃ回って、神棚に飾ってあったお札や古い達磨をもらい集めてくる。
集落のひたぁ、みんなそれを承知してるもんだから、達磨もお札もぶちゃらねぇでとっといてくれるんだ。

その上のやつらは、もらってきただるまと家から持ったきた米俵のふた(さんだわらって言う)とみかんと、どこかのうちから借りてきた唐草模様のいったんぶるしき(一反風呂敷)ぃ使って、獅子頭ぁつくる。
それから、子供が被るんにちょうどいいでっかさの達磨のけつとめだまぁくり抜いて、かぶってめぇがめえるようにする。
ほかに、藁を15センチくれえの束にして米俵みちょうに作って長い縄の紐を縛り付けとく。
集めてきた古りぃ札で、ごへぇみちょうにきってその俵にうんとくっつけとくんだ。
こんなお札なんかぁ終わるごろにゃぁ何にもなくなっちまう。
それから、山から竹ぇきってきて、竹ぼうきみちょうに作る。
集落に直径50cmくれぇの太鼓がひとつあった。
そりゃぁ上級生の体のでっけぇやっつがふたぁりで担ぐようにした。

さぁこれで準備は出来た。

 <キャスティング

そんつぎゃぁ、キャスティングだ。

全部中学三年の親方が決めるんだ。

まず、しんこうは草履番、玄関の上りはな(上り框)から上がる役の一人にひとりっつ草履番が付く。
座敷に上がってけぇるとき、はきもんがわかんなくなっちゃうから、一人に人りっつ草履番がつくんだ。
その上のやつは、竹の帚みちょうなやつを持つ役だ、「はっこめしょ」っつうんだ。
その上は、「せんたーらまんたーら」。
その上は、だるまだ。これに草履番が付く。
その上が、獅子だ。獅子にゃぁ二人へえる。これにも草履番が付く。
それで、一番上級生はうちんなかいはへえらねぇで、外でたいこをはたいて賑やかしてる。

上級生の中で信頼できる奴が、きんちゃく袋を持って、集金係だ。

その役割が決まると、と親方が「そんじゃみんなうちぃけぇって夕飯食ってこい、遅れねぇで集まれよ」っつって、ひとまず食事解散つうことんなる。
全部終わるんは11時過ぎんなるから、飯ぃ先ぃ食っとかねぇと、途中にゃ食う時ゃねぇから。

 <出発

子供らはうちいけえって飯ぃ食って、時間に遅れねぇように戻ってくるんだ。

みんな集まると親方が、集めてあった杉の落ち葉の山に準備の時ぃ使った残りのお札だの藁を一緒にくべて、火ぃつける。
みんなでその火にあたって、体ぁあっためて燃え終わるとみんなでへぇをふんづけて火ぃ消すんだ。
中にゃぁ、しょんべんひっかける奴もいる。そうすると、ほかのやつが「お札がへぇってるんだからしょんべんなんかひっかけると罰があたるど」ってゆうと、ほかの知恵のあるやつが「神様はさっきのけぶりと一緒に天に登っちゃったから、もうここにゃぁいねぇや、ただのめぇだけだからだいじょぶだ」
みんなはそれを信じて一斉に放水(放尿)消火だ。

火がけえたんを確認して、出発だ。先頭に上級生が一人先導役について、あとは、しんこうから順々に並ぶんだ。
せめぇ畦道みちょうな道をみんなででけぇ声をあげて、太鼓に合わせて・・

「とーりおいだとりおいだ じんどこどんのとりおいだぁ」とうたいながら、俺んちを目指してくるんだ。

なんでおれんちかっつうと、俺んちがこの集落の一番かみ(西)にあったから、おれんちから始めたんだっつうはなしだった。

だけどそのめぇに、俺んちのめぇの川に架かる橋の向こうぃ行って、みんなで鳥を追い出すしぐさをするんだ。
太鼓にあわして、でけえこえで「しぃぃぃしぃぃぃ」親方が「いいど」って言うまでやってる。
集落に出入りするでっけぇみちで何回もおんなじことをやって、鳥を追い出すんだ。
それから、いよいよ俺んちの庭にへぇる。

 <さて本番

そんときゃぁ太鼓もはたかねぇで静かに玄関めえまで行って、先導の親方が一気に玄関を開ける。
玄関のせめぇうちじゃぁ大変さぁ。
そんとき急にたいこもはたき始める。

どーんどどんどん どどどんどん どんどこどんどん どこどんどん!

まず獅子頭。が座敷ぃ上がって、うちの人のあたまぁ噛む格好をするんだ。

大人は笑ってるけど、小っちぇぇ子供らはおっかながって泣きながら逃げまある。
そん次に達磨をかぶったふたぁりがあがってうちの人のめぇにちゃんとおっつくべぇして「明けましておめでとうございます」と挨拶する。
そん時土間のほうじゃぁ、藁を束ねた俵を座敷に向かってほん投げながら「せんたぁら、まんたぁら]ってゆうんだ、わらの埃が出たって、ごみが落ちたって、くっつけたお札が落ちたってもかまわねぇ。
お札が落ちるとうちの人は嬉しがるんだ。
俵に縛り付けてある縄をたぐり寄せちゃぁまたほん投げる、何回もくりけぇすんだ。
そんでそんとき、玄関の外じゃぁ、竹の帚ぃもったものが「はっこめはっこめはっこめしょ、金銀サンゴではっこめしょ」ってゆいながら、玄関からうちんなけぇはきこむまねぇするんだ。
うちの人がご祝儀のへぇったお包みを獅子のひとに渡すと、獅子がもどってくる。
そうするとみんなもよして外ぃ出るんだ。
これで一軒分がおわりだ、そんなことを50軒もやるんだ。
全部終えると11時ごろんなる。
そのあとまっくらな道を今まで使っていた道具を、さっきの火を燃したとこの近くの山んなかぃぶちゃりにいぐんだ。これがおっかねぇ。だって真っ暗だし、近くにお墓もあるんだもの。みんな逃げるようにしてけぇってくる。

 <配当

集落でも、公会堂(集落の集会場)を開放してくれて、そけぇ集まって、親方たちがもらった金の計算んしているあいだ待ってるんだ。
最後に、合計の中から、親方がいくら、次がいくらと学年の順に決めて(全部親方が決めるんだ)配って、それで全部終わるんだ。
要するに子供らはそれが目的で参加するんだけどな。

それで鳥追いの行事は終わりだ。
今はそれをやっているのかどうかも私は知らない。

我が故郷の現在の様子。中央の鉄塔の根元のあたりが、子供たちの集合した場所、我が家の庭からの画像
とりおいの行事_a0290852_21554087.jpg


他国者

鳥追い?
鳥を負うこと?ネット検索してみた・

群馬県 群馬県吾妻郡 中之条町に「鳥追い祭」というのがある。

鳥追い祭は、田畑の作物を荒らす鳥や獣を追い払い、五穀(米・麦・あわ・きび・豆)やその他の作物の豊かな実り・町内厄除・家内安全を願って始められたといわれています。、400年以上の伝統があります
毎年1月14日には、伊勢宮での神事の後に町中を練り歩き、『鳥追いだ、鳥追いだ、唐土(とっと)の鳥を追いもうせ、セッセッセ、サーラバよって追いもうせ』の掛声とともに太鼓をたたきます。
厄年の人や商店等から厄落としや商売繁盛を祈ってみかん投げも行われています。

は「案山子」が農家のもう一人の働き手だったくらいに、雀にはなやまされてきたようです。
だからその憎き雀を追い出すための行事は日本中の農村のあちこちに形こそ違うものの残っているようです。
とりおいの行事_a0290852_21363817.jpgこのような祭りの姿を子供たちはまねて遊びに取り入れたのだろうか?

その起源はしりません。私たちはただお小遣いが欲しくてやったようなものでしたから。
ただこんなことを聞いた覚えがある。
この集落にこの行事を取り入れたのは次郎さんという人だそうだ。
この記事の中にも書いたが、「とーりおいだとりおいだ じんどこどんのとりおいだ」この中でじんどこどんはじろうどんのとりおいだがなまったものだそうです。


おそらく最近の子供たちは、
「群馬の男」が幼い頃の思い出にあるような
「とりおい」はしていないでしょう。
もうだいぶ前ですが、そのころには男子だけではメンバーがたりないのと、「男女共同参画」とやらで女の子も参加したやっているなんて聞きましたよ。中之条町 → HP

群馬弁は 〇&#▲◇※×~・・・・

しかし、じぶんでよんでみてもずいぶん長ったらしい記事だね。
これを読んで、その上でコメントまでくれたma-tyanさんと、夢民さん、本当に有難うございました。

by gunmaotoko | 2013-01-08 22:03 | Comments(3)
Commented by ma-tyan at 2013-01-10 22:28 x
中之条の鳥追いも良いですが私は同日に沢渡の鳥追いに行きます。
コチラ面白いですよ。
みかんも投げるけどお菓子とか雑貨日用品とかポンポン投げるので沢山拾えて楽しいです。

このブログ群馬弁で方言使いよ~く解ります。笑
Commented by gunmaotoko at 2013-01-11 09:46
ma-tyan さま
コメント有難うございます。
yo-shi2005です。このブログ初めてのコメントです。嬉しいです。
こんな上州弁で書いたってわかる人なんかいねぇだんべぇと思っていたけど、解ってくれる人がいたっつうこともうるしいです。
鳥追い行事は各地にあるようですが、私はどこも見たことはありません。
このブログは群馬に関係あることを書きますから、時々覗いてみてください。友達は群馬のことを何にも知らない奴で最初は群馬県が日本列島のどのへんにあるかも知らなかった人です。この記事の言葉もほとんどわからないようです。

Commented by 夢民 at 2013-01-12 09:16 x
gunmaotokoさま おはようございます。

よ~く昔のことを覚えていらっしゃいますね。
古き良き時代の 子どもたちを交えての行事
ドラマになりそうです。
鳥追い…鳥にとっては死活問題でしょうが
今の鳥は ベランダにまで来て
木の実を食べつくしていくので
万両が葉っぱだけになっちゃいました(/_;)
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